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問題A-1
アフリカ諸国の経済に関する以下の問いに答えなさい。
(1) アフリカ諸国の経済に「モノカルチャー経済」という特徴がありますが、これはどのような経済構造ですか。
(2) モノカルチャー経済がアフリカ諸国にもたらす課題を3つ説明しなさい。
解答のポイント
・モノカルチャー経済の定義を明確に説明する
・経済的不安定性や国際市場依存などの課題を具体的に記述する
解答例
(1) モノカルチャー経済とは、特定の農産物や鉱物資源などの一次産品の生産と輸出に過度に依存した経済構造のことです。アフリカの多くの国では、植民地時代にヨーロッパ列強によって形成された経済構造が独立後も続いており、カカオ、コーヒー、綿花、石油、ダイヤモンドなど特定の産品に国の収入の大部分を依存しています。
(2) モノカルチャー経済がもたらす課題:
① 国際市場価格の変動に弱い:主要輸出品の国際価格が下落すると国家収入が大幅に減少し、経済が不安定になります。
② 産業構造の多角化が進まない:一次産品の輸出に依存するため、製造業など他の産業部門の発展が遅れ、高付加価値産業が育ちません。
③ 先進国への依存度が高い:輸出先や価格決定権が先進国や多国籍企業に握られており、不平等な貿易関係が続きやすく、経済的自立が難しくなります。また、輸出品は原料のまま輸出されることが多く、加工による付加価値創出の機会を失っています。
問題A-2
アフリカの貿易構造に関する以下の問いに答えなさい。
(1) アフリカ諸国の主な輸出品と輸入品にはどのようなものがありますか。
(2) アフリカの貿易相手国の変化(2000年頃と現在の比較)について説明しなさい。
(3) 「フェアトレード」とは何か、またそれがアフリカの生産者にどのような利益をもたらすか説明しなさい。
解答のポイント
・アフリカの輸出入品目を資源・農産物・工業製品などの観点から整理する
・貿易相手国の変化、特に中国の台頭について言及する
・フェアトレードの理念と実践について説明する
解答例
(1) アフリカ諸国の主な輸出品と輸入品:
<主な輸出品>
・鉱物資源:原油、天然ガス、金、ダイヤモンド、プラチナ、銅、コバルトなどの鉱物資源
・農産物:カカオ、コーヒー、茶、綿花、ヤシ油、タバコ、バナナなどの農産物
<主な輸入品>
・工業製品:機械類、自動車、電子機器などの工業製品
・石油製品:精製された石油製品
・食料品:小麦、米などの穀物や加工食品
・医薬品・化学製品
(2) アフリカの貿易相手国の変化:
2000年頃は、旧宗主国を中心とする欧州諸国やアメリカが主要な貿易相手国でした。しかし、現在は中国の存在感が飛躍的に高まっています。中国は2000年代から急速にアフリカとの貿易額を増やし、2009年にはアメリカを抜いてアフリカ最大の貿易相手国となりました。中国はアフリカの資源獲得のため、道路、鉄道、港湾などのインフラ整備も積極的に行っています。また、インドやブラジル、トルコなどの新興国もアフリカとの経済関係を強化しています。
(3) フェアトレードとは:
フェアトレードとは、経済的に弱い立場にある開発途上国の生産者と労働者の持続可能な発展を目指す貿易の仕組みです。公正な価格の保証、長期的な取引関係の構築、環境に配慮した生産方法の奨励、労働環境の改善などを通じて、生産者の生活向上を支援します。
アフリカの生産者への利益:
・最低価格保証:国際市場価格が下落しても、一定の最低価格が保証されるため、安定した収入が得られます。
・プレミアム支払い:フェアトレード商品の売上から得られるプレミアム(割増金)は、生産者コミュニティの学校や診療所建設など社会開発に使われます。
・技術支援:持続可能な農業技術や品質向上のための技術支援が受けられます。
・環境保全:環境に配慮した生産方法を促進することで、長期的な環境保全と生産の持続可能性が高まります。
問題A-3
近年のアフリカにおける経済発展と課題について以下の問いに答えなさい。
(1) 1990年代以降、サハラ以南のアフリカでは経済成長が見られますが、その主な要因を3つ挙げて説明しなさい。
(2) 経済成長にもかかわらず、アフリカの多くの国々がいまだに貧困から脱却できない理由を説明しなさい。
(3) アフリカで急速に普及している電子マネーや携帯電話の活用が、どのように経済発展に貢献しているか具体例を挙げて説明しなさい。
解答のポイント
・アフリカの経済成長要因を資源・人口・政治的安定などから説明する
・経済成長と貧困削減の乖離についての構造的問題を分析する
・ICTの普及がもたらす社会経済的変化を具体的に説明する
解答例
(1) 1990年代以降のアフリカの経済成長の主な要因:
① 資源価格の上昇と資源需要の拡大:2000年代に入り、中国をはじめとする新興国の急速な経済成長により、石油や鉱物資源の国際価格が上昇し、資源輸出国の収入が増加しました。
② 政治的安定と経済政策の改善:多くのアフリカ諸国で民主化が進み、政治的安定が実現。また、IMFや世界銀行の構造調整プログラムを経て、マクロ経済政策が改善され、インフレ抑制や財政規律の強化などが進みました。
③ 人口増加と内需拡大:アフリカは世界で最も人口増加率が高く、若年層の割合も大きい地域です。人口増加に伴う労働力の増加と、中間層の拡大による消費市場の成長が経済発展を支えています。
(2) 経済成長にもかかわらず貧困から脱却できない理由:
・成長の恩恵の不均等な分配:経済成長の恩恵が一部のエリート層や都市部に集中し、貧困層や農村部にまで十分に行き渡っていません。
・人口増加率の高さ:経済成長率を上回る人口増加率により、一人当たりのGDPの伸びが抑えられています。
・産業構造の偏り:付加価値の低い一次産品依存から脱却できず、製造業や知識集約型産業の発展が限られています。
・インフラ不足:電力、道路、水道などの基本的インフラの不足が経済活動の障壁となっています。
・紛争や政情不安:一部の国や地域では、紛争や政情不安が続き、持続的な開発を妨げています。
(3) 電子マネーや携帯電話の活用と経済発展:
アフリカでは、銀行口座を持たない人々でも携帯電話を利用した金融サービス(モバイルマネー)にアクセスできるようになり、金融包摂が急速に進んでいます。代表的な例として、ケニアで始まった「M-Pesa」というモバイル送金サービスがあります。これにより:
・農村部の小規模農家が市場価格の情報にアクセスし、より有利な価格で作物を販売できるようになりました。
・出稼ぎ労働者から家族への送金が容易になり、地方経済が活性化しています。
・小規模事業者がローンや保険などの金融サービスを利用できるようになり、ビジネスの拡大や安定化が進んでいます。
・政府や企業からの支払いも電子的に行えるようになり、汚職や不正の削減にも貢献しています。
また、スマートフォンの普及により、農業や医療、教育などの分野でも情報へのアクセスが改善し、生産性向上や生活の質の改善に寄与しています。
問題B-1
アフリカで深刻化する砂漠化について、以下の問いに答えなさい。
(1) 砂漠化とは何か、またサヘル地域で砂漠化が特に深刻な理由を説明しなさい。
(2) 砂漠化の主な原因を自然的要因と人為的要因に分けて説明しなさい。
(3) 砂漠化対策として行われている取り組みを2つ挙げて説明しなさい。
解答のポイント
・砂漠化の定義とサヘル地域の地理的特徴を関連付ける
・自然的要因と人為的要因を区別して説明する
・具体的な対策事例に言及する
解答例
(1) 砂漠化とは:
砂漠化とは、「乾燥地域、半乾燥地域、乾燥半湿潤地域における土地の劣化」と定義され、土地の生産力が低下し、表土や植生が失われていく現象です。サヘル地域(サハラ砂漠の南縁部、モーリタニアからチャドにかけての東西に広がる帯状の地域)で砂漠化が特に深刻な理由は、この地域が気候変動の影響を受けやすい砂漠と熱帯サバナの移行帯に位置し、もともと降水量が少なく(年間200〜600mm程度)不安定な気候条件にあるためです。また、人口増加率が高く、土地への人為的圧力が増大していることも要因となっています。
(2) 砂漠化の主な原因:
<自然的要因>
・気候変動:長期的な降水量の減少や干ばつの頻発
・気温上昇による蒸発散量の増加
・もともと脆弱な土壌条件(栄養分が少なく、風や水による侵食を受けやすい)
<人為的要因>
・過放牧:家畜の増加による植生の過剰な消費と土壌の踏み固め
・過度な薪炭材の採取:燃料用の木材採取による森林減少
・不適切な農業慣行:休耕期間を短縮した過度の耕作や化学肥料の不適切な使用
・人口増加による土地への圧力増大
(3) 砂漠化対策の取り組み:
① グリーンベルト計画(グレートグリーンウォール):アフリカ連合が推進する、サヘル地域を横断する約8,000kmにわたる植林帯を造成するプロジェクト。2007年に開始され、砂漠化の進行を食い止め、地域の生態系を回復させることを目指しています。すでにセネガル、ブルキナファソ、ニジェールなどで植林活動が進んでいます。
② 持続可能な農業技術の導入:伝統的知識と現代技術を組み合わせた対策が行われています。例えば:
・「ザイ」と呼ばれる伝統的な農法(ブルキナファソなど):乾燥した土地に小さな穴を掘り、有機物を入れることで水分を保持し、作物の生育を助ける技術
・アグロフォレストリー(農林複合経営):農作物と樹木を同じ土地で育てることで、土壌保全と生産性向上を両立させる手法
・小規模灌漑システムの導入:効率的な水利用を可能にする点滴灌漑などの技術普及
これらの対策は、日本を含む先進国やNGOなどによる国際協力を通じて支援されています。
問題B-2
アフリカの熱帯雨林減少と生物多様性の危機について、以下の問いに答えなさい。
(1) アフリカの熱帯雨林はどの地域に分布し、どのような特徴を持っていますか。
(2) アフリカの熱帯雨林が減少している主な原因を3つ挙げて説明しなさい。
(3) 熱帯雨林の減少がもたらす環境問題と、それに対する保全の取り組みについて説明しなさい。
解答のポイント
・熱帯雨林の分布と生態系としての特徴を説明する
・森林減少の社会経済的・政治的要因を分析する
・環境問題の多面性(地域的〜地球規模)と保全活動の実例に言及する
解答例
(1) アフリカの熱帯雨林の分布と特徴:
アフリカの熱帯雨林は主に赤道付近のコンゴ盆地(コンゴ民主共和国、ガボン、カメルーン、中央アフリカ共和国など)とギニア湾岸(ナイジェリア西部、ガーナ、コートジボワールなど)に分布しています。特にコンゴ盆地の熱帯雨林はアマゾンに次ぐ世界第二の規模を持ち、「アフリカの肺」とも呼ばれています。
特徴:
・多様な生物相:数千種類の植物、400種以上の哺乳類、1,000種以上の鳥類、多数の両生類、爬虫類、昆虫が生息
・固有種の豊富さ:ゴリラ、チンパンジー、ボノボなどの類人猿や、オカピなど、他の地域では見られない固有種が多数存在
・多層構造:高木層(樹高40m以上)、亜高木層、低木層、草本層など複数の階層から成る複雑な生態系
・年間を通じた高温多湿の環境:年間降水量2,000mm以上、平均気温25℃前後の安定した気候条件
(2) 熱帯雨林減少の主な原因:
① 商業的伐採:高級家具材や建材として価値の高い木材(マホガニーなど)の違法伐採を含む商業的な森林伐採が行われています。特に中国や欧州向けの木材輸出が増加しています。
② 農地転換:人口増加に伴う食料需要の増加や、パーム油やゴムなどの商品作物のプランテーション開発のために森林が農地に転換されています。特に油ヤシプランテーションの拡大が森林減少の大きな要因となっています。
③ インフラ開発:道路、鉱山、ダム、都市の拡大などのインフラ開発により、直接的な森林破壊が起きるだけでなく、これまでアクセスが困難だった森林地域への人の侵入を容易にし、間接的な森林減少も引き起こしています。
(3) 熱帯雨林減少がもたらす環境問題と保全の取り組み:
<環境問題>
・生物多様性の喪失:多くの固有種や絶滅危惧種の生息地が失われています
・気候変動への影響:森林は炭素の貯蔵庫であり、森林減少は大気中のCO2増加を加速させます
・土壌侵食と水質汚染:森林がなくなると土壌侵食が進み、河川の汚染や洪水リスクが高まります
・先住民族の生活基盤喪失:森林に依存して暮らしてきた先住民族の文化や生活が脅かされています
<保全の取り組み>
・保護区の設置:国立公園や自然保護区の設立により、重要な生態系の保全が進められています。例えば、コンゴ民主共和国のビルンガ国立公園や、ガボンの13の国立公園ネットワークなどがあります。
・REDD+プログラム:「森林減少・劣化からの温室効果ガス排出削減」を目指す国際的な枠組みで、森林保全に取り組む国々に経済的インセンティブを提供しています。コンゴ盆地諸国も参加しています。
・持続可能な森林管理:FSC(森林管理協議会)認証などの制度を通じて、環境に配慮した持続可能な林業の促進が行われています。
・地域住民参加型の保全活動:地域住民が森林保全に参加し、その恩恵を受けられるようなエコツーリズムの開発や、コミュニティフォレストリーの推進も各地で行われています。
問題B-3
気候変動がアフリカに与える影響について、以下の問いに答えなさい。
(1) 気候変動によってアフリカ大陸で起きている、または予測されている気象現象の変化を説明しなさい。
(2) それらの変化がアフリカの農業や食料安全保障に与える影響を説明しなさい。
(3) アフリカ諸国は気候変動対策としてどのような適応策や緩和策に取り組んでいるか、具体例を挙げて説明しなさい。
解答のポイント
・気候変動の地域ごとの多様な影響を説明する
・農業や食料生産への影響を生態系と社会経済的側面から分析する
・適応策と緩和策の両面から対策を具体的に説明する
解答例
(1) 気候変動によるアフリカ大陸の気象現象の変化:
・気温上昇:アフリカ大陸の平均気温は世界平均を上回るペースで上昇しており、21世紀末までに平均で3〜6℃の上昇が予測されています。特に北部と南部での上昇が著しいとされています。
・降水パターンの変化:地域によって異なる影響が予測されています。東アフリカでは降水量の増加、南部アフリカと北部アフリカでは降水量の減少が予測されています。また、雨季の開始時期や終了時期の変動、降水の不規則化が進んでいます。
・極端気象の増加:干ばつ、洪水、熱波、サイクロンなどの極端な気象現象の頻度と強度が増加しています。特に2010年代以降、東アフリカや南部アフリカでの大規模な干ばつや、西アフリカでの洪水が頻発しています。
・海面上昇:沿岸部では海面上昇が進行しており、低地の浸水や塩水の侵入が懸念されています。特にナイル川デルタやギニア湾沿岸の低地が脆弱です。
(2) 農業や食料安全保障への影響:
・作物生産への影響:気温上昇や降水パターンの変化により、多くの地域で主要作物(トウモロコシ、小麦、キビ、ソルガムなど)の収量減少が予測されています。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)によると、サハラ以南アフリカでは2050年までに主要穀物の収量が最大22%減少する可能性があります。
・栽培適地の変化:コーヒーやカカオなどの特定の作物は、気温上昇により現在の栽培地域が適さなくなる可能性があります。例えば、エチオピアではコーヒー栽培適地が大幅に減少すると予測されています。
・家畜生産への影響:牧草地の劣化や水資源の減少により、牧畜に依存する地域では生計が脅かされています。また、気温上昇によって家畜の健康や生産性にも悪影響が出ています。
・病害虫の増加:気温上昇や湿度の変化により、農作物の病害虫発生が増加しています。例えば、サバクトビバッタの大発生が東アフリカで深刻な被害をもたらしました。
・食料価格の高騰と栄養不良:作物生産の不安定化は食料価格の上昇を招き、特に貧困層の食料アクセスを悪化させています。これにより、栄養不良や飢餓のリスクが高まっています。
(3) 気候変動対策の取り組み:
<適応策>
・気候スマート農業の導入:干ばつに強い作物品種(ドライランドシリアルなど)の開発と普及、効率的な水管理技術の導入など。例えば、ルワンダでは斜面を活用したテラス農法による土壌保全と生産性向上の取り組みが行われています。
・早期警報システムの強化:極端気象の予測と早期警報システムの整備により、被害軽減を図っています。エチオピアでは干ばつの早期警報システムが整備されています。
・マングローブの植林と沿岸保護:モザンビークやケニアなどの沿岸国では、海面上昇や高潮に対する防御としてマングローブ林の保全・回復が進められています。
・保険制度の導入:気象インデックス保険など、気候リスクに対応した保険制度の導入が進んでいます。ケニアやエチオピアでは干ばつに対する家畜保険制度が導入されています。
<緩和策>
・再生可能エネルギーの推進:太陽光や風力、地熱などの再生可能エネルギーの開発と普及が進んでいます。例えば、モロッコではアフリカ最大の太陽光発電所「ヌール太陽光発電所」が稼働しており、ケニアでは地熱発電が積極的に導入されています。
・森林保全と植林:森林減少を抑制し、炭素吸収源を維持・拡大する取り組みが行われています。エチオピアでは「緑の遺産イニシアチブ」として大規模な植林キャンペーンが実施されています。
・クリーン調理技術の普及:薪や炭に代わる調理用エネルギーとして、太陽光調理器やバイオガスの普及が進められています。これにより、森林保全と温室効果ガス排出削減の両方に貢献しています。
これらの取り組みに対して、先進国や国際機関からの資金・技術支援も行われていますが、アフリカ諸国の適応能力向上のためには一層の国際協力が必要とされています。
問題C-1
アフリカにおける貧困と格差の問題について、以下の問いに答えなさい。
(1) アフリカ、特にサハラ以南アフリカの貧困状況を、具体的な指標を用いて説明しなさい。
(2) アフリカ内での格差(国家間、都市・農村間、社会階層間など)について説明しなさい。
(3) 貧困削減のために実施されている国際的な取り組みについて具体例を挙げて説明しなさい。
解答のポイント
・貧困を多面的に捉え、複数の指標から説明する
・格差の多層性を社会的・地理的・経済的側面から分析する
・国際機関やNGOによる貧困削減の取り組みを具体的に説明する
解答例
(1) サハラ以南アフリカの貧困状況:
・絶対的貧困率:世界銀行の統計によれば、サハラ以南アフリカでは2019年時点で人口の約41%が1日1.90ドル未満で生活する極度の貧困状態にあります。これは他の地域と比較して最も高い割合です。
・人間開発指数(HDI):国連開発計画(UNDP)の人間開発指数では、サハラ以南アフリカの多くの国が下位に位置しています。特に中央アフリカ共和国、ニジェール、チャドなどは世界最低水準のHDI値を示しています。
・乳幼児死亡率:サハラ以南アフリカでは、1,000人の出生あたり5歳未満児死亡率が76人(世界平均の2倍以上)と高く、特に西アフリカと中部アフリカで高い傾向があります。
・平均寿命:サハラ以南アフリカの平均寿命は約63歳(2019年)で、世界平均(72歳)を大きく下回っています。
・教育アクセス:初等教育の就学率は改善されてきていますが、中等教育以上への進学率は依然として低く、特に女子の教育機会が限られている国が多くあります。
・栄養不良:サハラ以南アフリカでは、5歳未満児の約30%が発育阻害(慢性的な栄養不良)の状態にあります。
(2) アフリカ内の格差:
<国家間格差>
・北アフリカ諸国(エジプト、モロッコなど)と南アフリカ共和国、セーシェル、モーリシャスなどの一人当たりGDPは比較的高く、生活水準も改善されています。一方、中部アフリカや西アフリカの内陸国(ニジェール、ブルキナファソなど)は依然として深刻な貧困状態にあります。
・資源輸出国(アンゴラ、ナイジェリアなど)と非資源国の間にも経済格差が存在します。
<都市・農村間格差>
・多くのアフリカ諸国では、都市部と農村部の間に大きな生活水準の格差があります。例えば、ケニアでは農村部の貧困率は都市部の約2倍です。
・基本サービス(水道、電気、医療、教育など)へのアクセスも都市部に集中しており、農村部では依然として限られています。例えば、農村部の電力アクセス率は20%以下の国が多くあります。
<社会階層間格差>
・多くのアフリカ諸国では、富の集中が進んでおり、ジニ係数(所得格差を示す指標)が高い傾向があります。特に南アフリカは世界でも最も不平等な国の一つとされています。
・ジェンダー格差も大きく、女性は経済的機会、土地所有権、教育へのアクセスなどで不利な立場にあることが多いです。
・民族間の格差も存在し、特定の民族グループが政治的・経済的に優遇される一方、他の民族が周縁化される状況が見られる国もあります。
(3) 貧困削減のための国際的取り組み:
・持続可能な開発目標(SDGs):2015年に国連で採択されたSDGsの第1目標は「あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる」ことであり、アフリカ諸国も含めた国際社会全体での取り組みが進められています。
・政府開発援助(ODA):日本、アメリカ、欧州諸国などの先進国や国際機関からの開発援助がアフリカの貧困削減に貢献しています。例えば、日本のJICA(国際協力機構)はアフリカ諸国で農業開発、保健医療、教育、インフラ整備などのプロジェクトを実施しています。
・マイクロファイナンス:貧困層への小規模融資を提供することで、小規模ビジネスの起業や拡大を支援する取り組みが広がっています。例えば、グラミン銀行の手法を取り入れたマイクロファイナンス機関がウガンダやタンザニアなどで活動しています。
・条件付き現金給付:貧困家庭に対して、子どもの就学や予防接種などの条件を満たした場合に現金を給付するプログラムが導入されています。例えば、タンザニアの「社会的行動のための生産的社会的セーフティネット」プログラムなどがあります。
・技術支援と能力開発:単なる資金援助だけでなく、技術移転や人材育成も重視されるようになっています。例えば、アフリカの若者向けのICTスキル開発プログラムや、農業技術の普及活動などが各国・各機関によって実施されています。
・債務削減イニシアチブ:重債務貧困国(HIPCs)イニシアチブなどを通じて、多額の対外債務を抱えるアフリカ諸国の債務軽減が行われ、それによって浮いた資金を貧困削減プログラムに振り向ける取り組みが実施されています。
問題C-2
アフリカにおける平和構築と民主化の課題について、以下の問いに答えなさい。
(1) アフリカで紛争が発生する主な原因と、それらが社会・経済にもたらす影響を説明しなさい。
(2) アフリカ連合(AU)の平和・安全保障における役割と取り組みについて説明しなさい。
(3) アフリカ諸国における民主化の進展と課題について具体例を挙げて説明しなさい。
解答のポイント
・紛争の複合的要因(歴史的・民族的・資源的など)を分析する
・AUの制度的枠組みと実際の活動事例について説明する
・民主化の進展と挫折の両面について具体的事例に言及する
解答例
(1) アフリカの紛争の主な原因とその影響:
<主な原因>
・植民地時代の遺産:人為的な国境線の設定により、異なる民族が同一国家内に強制的に包含されたり、同一民族が複数国に分断されたりした歴史が、民族間の対立や国境紛争の背景になっています。
・民族・宗教対立:多様な民族や宗教の共存は豊かな文化的多様性をもたらす一方、政治的・経済的な不平等と結びつくと対立の原因となります。例えば、ルワンダの大虐殺(1994年)はフツ族とツチ族の対立が背景にありました。
・資源をめぐる争い:鉱物資源(ダイヤモンド、金、コルタンなど)や石油などの天然資源の利権をめぐる争いが紛争の原因となっています。コンゴ民主共和国の紛争は「資源の呪い」の代表例とされています。
・貧困と格差:経済的機会の不足や極端な貧困が若者の過激化や反政府勢力への参加を促す要因となっています。
・政治的不安定:独裁政権、クーデター、選挙不正など、政治的な不安定要因が紛争を引き起こしています。
<社会・経済への影響>
・人的被害:直接的な戦闘による死傷者に加え、難民・国内避難民の発生、食料不足や医療サービスの崩壊による間接的な人命損失が生じています。
・経済的損失:インフラの破壊、生産活動の停止、投資の減少などにより、経済発展が妨げられます。世界銀行の試算によれば、紛争は対象国のGDPを平均して年間2〜8%低下させるとされています。
・社会的分断:紛争は社会的な信頼関係を破壊し、民族間や地域間の分断を深めます。これが将来的な紛争の種となる悪循環も生じています。
・教育・保健への影響:学校や病院の破壊、教師や医療従事者の流出により、基本的サービスが崩壊し、長期的な人的資本の形成が阻害されます。
(2) アフリカ連合(AU)の平和・安全保障における役割と取り組み:
アフリカ連合は2002年にアフリカ統一機構(OAU)の後継として設立され、平和と安全保障の分野で以下のような役割を果たしています:
・制度的枠組み:AU平和安全保障理事会(PSC)が設立され、紛争の予防、管理、解決のための意思決定機関となっています。
・アフリカ待機軍(ASF):AUは5つの地域(北、西、中央、東、南部)にそれぞれ待機軍を配置し、必要に応じて平和維持活動を展開できる体制を整えています。
・平和維持活動:AUは独自の平和維持ミッションを展開しています。例えば、ソマリアにおけるAUソマリア・ミッション(AMISOM)、ダルフール(スーダン)におけるAU・国連合同ミッション(UNAMID)などがあります。
・調停・予防外交:AUは紛争の調停や予防外交にも積極的に関与しています。例えば、南スーダンの和平プロセスやマリの政治危機への対応などでAUは重要な役割を果たしました。
・「非合法的な政権交代の拒否」原則:AUはクーデターなどによる非合法的な政権交代を認めない原則を採用し、そのような事態が発生した国の加盟資格を停止する措置をとっています(例:マリ、ギニア、ブルキナファソなど)。
これらの取り組みにより、AUはアフリカの平和と安全保障において中心的な役割を果たすようになりましたが、予算や装備、人材などの面での制約も抱えています。
(3) アフリカ諸国における民主化の進展と課題:
<民主化の進展>
・1990年代以降の複数政党制導入:冷戦終結後、多くのアフリカ諸国で一党独裁体制から複数政党制への移行が進みました。例えば、ベナン、ガーナ、ケニアなどでは定期的な選挙が実施されるようになりました。
・平和的政権交代の事例:ガーナ、セネガル、ナイジェリアなどでは、選挙を通じた平和的な政権交代が実現しています。特にガーナは1992年以降、複数回の政権交代を経験し、アフリカにおける民主主義の成功例とされています。
・市民社会の発展:多くの国で市民社会組織やメディアの活動が活発化し、政府の監視や政策提言などの役割を果たすようになっています。
<課題>
・「選挙型民主主義」の限界:形式的な選挙は行われていても、実質的な権力分立や法の支配が確立していない国が多く存在します。
・「三選禁止条項」の改憲:多くの国で憲法上の大統領任期制限(通常2期まで)が設けられていますが、ルワンダのカガメ大統領やウガンダのムセベニ大統領など、憲法を改正して長期政権を維持する例も見られます。
・選挙関連暴力:ケニア(2007-08年)、コートジボワール(2010-11年)などでは、選挙結果をめぐる深刻な暴力が発生しました。
・民主的後退現象:一時は民主化が進んだと評価された国でも、近年は権威主義的傾向が強まるケースが見られます。例えば、タンザニアでは野党や市民社会への締め付けが強化されています。
・軍事クーデター:西アフリカでは2020年以降、マリ、ギニア、ブルキナファソなどで軍事クーデターが発生し、民主的に選出された政権が打倒されるという「民主主義の後退」が見られます。
アフリカの民主化は進展と挫折を繰り返しながら発展しており、形式的な民主主義の確立だけでなく、その質的向上や民主的文化の定着が今後の課題となっています。
問題C-3
アフリカにおける保健医療の課題と国際協力について、以下の問いに答えなさい。
(1) アフリカが直面している主な保健医療の課題を3つ挙げ、それぞれについて説明しなさい。
(2) 感染症対策におけるアフリカと国際社会の取り組みについて、具体例を挙げて説明しなさい。
(3) 日本のアフリカに対する保健医療分野での国際協力について説明しなさい。
解答のポイント
・保健医療の構造的課題と疾病負荷について説明する
・国際社会とアフリカ自身の協調的取り組みを具体的に説明する
・日本の保健医療分野における特徴的な国際協力を説明する
解答例
(1) アフリカの主な保健医療の課題:
① 感染症の負担:HIV/エイズ、マラリア、結核などの感染症が依然として大きな健康上の脅威となっています。世界のHIV感染者の約67%がサハラ以南アフリカに集中しており、マラリアによる死亡の94%以上もアフリカで発生しています。さらに、エボラウイルス病などの新興感染症の流行も繰り返し発生しています。近年では、COVID-19パンデミックも医療システムに大きな負担をかけました。
② 医療システムの脆弱性:多くのアフリカ諸国では、医療従事者の不足、医療施設・機器の不足、医薬品の供給不足など、医療システム全体の脆弱性が課題となっています。WHO(世界保健機関)の基準では人口1,000人あたり2.5人の医療従事者が必要とされていますが、サハラ以南アフリカの多くの国ではその数値を大きく下回っています。例えば、ニジェールでは人口1,000人あたりの医師数が0.05人未満です。また、アフリカの多くの国では医療費の公的支出が不十分で、個人の自己負担が大きく、貧困層の医療アクセスを妨げています。
③ 非感染性疾患(NCDs)の増加:経済発展や生活様式の変化に伴い、心血管疾患、糖尿病、がん、慢性呼吸器疾患などの非感染性疾患の割合が増加しています。都市化、食生活の変化、身体活動の減少などがこの傾向を加速させています。しかし、多くのアフリカ諸国の医療システムは感染症対応を中心に構築されており、NCDsに対応する体制が整っていません。このため、アフリカは感染症と非感染性疾患の「二重の負担」に直面しています。
(2) 感染症対策におけるアフリカと国際社会の取り組み:
<HIV/エイズ対策>
・世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド):2002年に設立された国際的な資金提供機関で、HIV/エイズ、結核、マラリア対策に集中的に資金を提供しています。アフリカではこの資金により、多くの国で抗レトロウイルス療法(ART)へのアクセスが拡大しました。
・米国大統領エイズ救済緊急計画(PEPFAR):2003年に開始された米国のプログラムで、主にアフリカのHIV/エイズ対策に焦点を当てています。これにより、数百万人がARTを利用できるようになりました。
・アフリカ自身の取り組み:アフリカ連合は「AIDS Watch Africa」を設立し、各国の対策を調整しています。南アフリカやウガンダなどでは、国内でのHIV予防キャンペーンが積極的に実施されています。
<マラリア対策>
・Roll Back Malaria(RBM)パートナーシップ:WHO、UNICEF、UNDP、世界銀行が1998年に開始したイニシアチブで、マラリア対策のための国際的な協調を促進しています。
・殺虫剤処理済み蚊帳(ITNs)の普及:国際的な支援により、多くのアフリカ諸国で殺虫剤処理済み蚊帳の無料配布が行われています。ルワンダやタンザニアなどでは、これにより5歳未満児のマラリア死亡率が大幅に減少しました。
・アフリカ・マラリア排除同盟:アフリカ連合が中心となり、2030年までにマラリアの排除を目指す取り組みを推進しています。
<新興感染症への対応>
・アフリカ疾病予防管理センター(Africa CDC):2017年に設立されたアフリカ連合の専門機関で、感染症の監視、対応、予防のための能力強化を行っています。COVID-19パンデミック時には、検査キットの調達や各国への技術支援で重要な役割を果たしました。
・エボラ出血熱対応:2014-16年の西アフリカでのエボラ出血熱流行では、WHO、MSF(国境なき医師団)、各国政府などが連携して対応しました。この経験をもとに、アフリカ諸国では緊急時対応能力の強化が進められています。
・COVAX:COVID-19ワクチンの公平なアクセスを確保するための国際的な枠組みで、多くのアフリカ諸国がこれを通じてワクチンの供給を受けました。
(3) 日本のアフリカに対する保健医療分野での国際協力:
・TICAD(アフリカ開発会議)を通じた取り組み:日本は1993年から定